【梅酒の梅の実】 文/Elise


梅雨時になると、梅酒用の青梅が店頭に並ぶ。

小学生のころ、私たち一家は借家に住んでいて、毎年正月になると、大家さんの家にご挨拶に伺った。食卓に並んだお心尽くしのごちそうの中に、梅酒の梅の実があった。
大家さんは梅の実をさっと洗って、「洗えばアルコールが抜けるからね」と言いながら、私に差し出した。
かじってみると、口の中に何とも言えない良い香が広がって、私は幸福感に包まれた。もう1つねだると「子どもは1つね」。
洗っても、梅の実にはまだたっぷりとアルコール分が含まれているのだ。だから1つ。

私はこの梅の実が大好きだった。私の両親はお酒を飲まなかったので、食べられるのは、大家さんの家に伺った時だけだった。
子どもでも、正月だから許された梅酒の梅の実……。

そういえば、梅酒はもう何年も漬けていない。今年は久しぶりに漬けてみようか。


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