お屠蘇
 (文/おぐら美月)

お正月には各々こだわりの一杯で祝いたいもの。しかし、日本の伝統的な三が日のお酒といえばやはり、お屠蘇です。  
お屠蘇をお正月に飲む風習は、中国から伝わったもので、「蘇」という鬼を「屠(ほふ)る」(殺す)と言う意味だと言われます。日本には、平安時代頃に宮中行事として伝わり、江戸時代には、武家や一般の上流階級にも取り入れられていたようです。やがて、一年の家内平安と幸福を願って、広く飲まれるようになりました。

あの独特の風味は、「屠蘇散」という約5種類の生薬を配合したものを、日本酒に7、8時間おいて浸出させたものです。元来は、各家庭で生薬を調合し、井戸水に吊るしておいて、元旦に若水を採ったそうですが、井戸が家庭になくなった今、この風習もすたれ、ティーパックのかたちで薬局などで売られています。

「屠蘇散」の効用としては、健胃・鎮痛・発汗・解熱・鎮咳去痰作用などがあげられます。お正月のご馳走で疲れた胃腸をいたわり、風邪を予防しようという先人の智恵のようですが、もっとも、三が日に飲んだだけでその医学的な効用を期待するのは無理なことでしょう。一年の無病息災と延命長寿を願う薬酒ですから、若者の生気にあやかるため、年少の者から順々に杯をすすめて飲みまわすのが正式な流儀です。小さい子供も飲みやすいようにと、清酒にみりんがブレンドされたりします。

昨今、伝統的な日本のお正月の風習はすたれていきました。お屠蘇を家族そろって元旦に飲む家庭も少なくなっていることでしょう。一年の始まりに、家族の健康を祈って絆を再確認する意味では、復活させるのもいいかもしれません。

おいしいしぼりたて原酒やとっておきのワインはそのあとで…


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