| 【酒林】 (文/おぐら美月) 古来よりの風習として、造り酒屋では酒神のご加護と良質の酒造りを祈って、杉の葉を切り束ねて球状にした「酒林(さかばやし)」を軒下につるしてきました。新酒の出来る初冬のころになると、この「酒林」が緑の色濃い真新しいものに取り替えられ、それを合図に人々は新酒を求めに訪れたといいます。今でも全国の酒蔵には、「酒林」がつるされていますが、近頃では、日本酒にこだわりを持つ酒販店や居酒屋などのシンボルとしても用いられていますから、目にされたことも多いかもしれません。この「酒林」をつるす習しは、酒を賞して「愁えを掃う玉箒」ということから きているといわれています。酒は飲めば愁いを忘れ、よい気分にしてくれるというもので、すがすがしい香りのする杉の葉で作った酒箒がそれに当たるというわけです。 また一説では、酒壺や神酒を「みわ」ということから、酒の神を祀っているとされる奈良の三輪神社のご神体が杉の木であることによるともいわれます。 嘗酒(さかびと・神社の御酒の醸造をつかさどる人)が、神の力を受けて、一夜のうちに美酒を醸したという故事も残されており、昔、三輪の良質な酒をおいている酒屋で杉の葉を店先につるして合図にしたことが始まりではないかという説もあります。 この「酒林」は職人の手造りのよるもので、今では造れる人も少なくなっているということです。日本酒を愛する我々にとってはいつまでも継承されてほしい伝統ですね。
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