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【新天地に乾杯】 文/田中雅代
「転勤出たよ。福井県」
転勤がそろそろあることはわかっていた。
でも日本海側とは……。
寒いのが苦手な私は、夫からの電話にしばらく反応できなかった。
「雪がすごく降り積もるらしい」
「雷が鳴り響くよ」
「方言は何を言っているかわからないよ」
「何もないところよ」
いろいろな言葉を餞別に、慣れ親しんだ都市を離れた。
新緑の頃に到着し、夏を迎えた。
食べ物はおいしいし、お酒もおいしい。
お酒はどちらかというとあまり飲めない方だが、日本酒が好き。
とはいってもたくさん飲めるわけではない。
酒屋さんにずらりと並んだ一升瓶の隣に、一合の小瓶も見え隠れする。
ちょうど私が飲むのにぴったりの量だ。
お酒の名前と酒屋さんの手書きの紹介文を読みながら、どれを買うか決める。
ほんのり甘く、すっきりしたお酒が私の好み。
どこか優しくのんびりした方言と何もない街になじんできた。
住めば都、まさにそうだ。
雪が降り積もる頃には、お気に入りのお酒が見つかっているに違いない。
新天地に乾杯!
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