その日はいつもより家事がはかどる。仕事も外出も早めにきりあげてさっさと帰宅し、家族にカレーかシチューを作ったら、自分の支度にとりかかる。 気のあう女友達で集まって飲むほど楽しいものはない。心密かに想いをよせる男友達と飲むのが楽しかったときもあった。今もカワイイ若い男のコが加われば、場はまたもりあがるものだ。でも、女同士で飲むときには気取りも遠慮もいらない。駆け引きも策略もいらない。素の自分で飲める。 化粧もさりげなく念入りに、服装も懲りすぎずかつ手抜きにならぬよう、上品なクラスカジュアルでオトナを演出する。最後に鏡でチェックをすませたら、あとはそれにふさわしい飲むスタイルと会話。 まずはお決まりのビールで乾杯したら、おのおの好きなものに移っていく。女たちの胃は上品で容量も少ないから、いくらのどごしがよくてもビールばかり飲みつづけてはいられない。ワインやカクテル、フルーティな吟醸酒あたりがお気に入りである。 話題は目下の問題事からスタート。世間つきあい、教育のこと、趣味にうわさに社会への不満、そして決まって出るのが夫のグチ。 「どうしてあんなにグータラしていられるのかしら。いつ見ても居眠りしてる」 「若い頃はしょっちゅうあちこち出かけたものだったのに」 「この頃息子もパパそっくりになってきて、もう、汚いったらないんだから」 「あれで結構モテルんだから信じられない」 結局、オトナのイイ女になって出てきたつもりが、気がつけば家族の話題になっている。 昔、まだ恋人同士だった頃、グータラでもなくてスリムだった夫と、よく飲みにいった。隣にいたのはシミもタルミもなかった私。ふたりで年月を重ねて手に入れたぜい肉と小ジワと家庭の安らぎ。いつのまにか世代交代で、青春ドラ マの主人公は息子になってしまった。 ![]() 12時の鐘が鳴れば女たちのタイムアウト。もう、帰らなきゃ。明日の朝も、犬の散歩に朝ご飯にお弁当。家庭が自分のベースであることを再確認しながら、おいしいお酒と会話で充分にリフレッシュした後は、また、妻として、母として、活躍する英気がチャージされている。 もし、物好きな誰かがこのシンデレラをお気に召したとしても、大切な家族のいる彼女のことはお捜しになりませんように。
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