【乾杯の色】 文/中野未治子


その日、たくさんの「乾杯」の声の一番遠く、
黄金色のシャンパンが揺れるグラスの向こう、
じんわり浮かぶ父の涙があった。
慣れない白いドレスを着せられて壇上にあった私。
となりには緊張で汗ばむパートナー。

その日、彼との初めての「乾杯」。
目の前には見慣れないフランス料理。
いつもよりおしゃれして気取った私の前には、
薄い透明なグラスにそそがれたロゼワイン。
それの力を借りて、彼に寄りかかった帰り道。

その日、女達だけの「乾杯」。
7年間も子宝に恵まれなかった友達が妊娠した。
たくさんの笑顔とはじけるビールの泡達。
彼女の手にはビールの代わりに幸せ色のオレンジジュース。

「乾杯」、それは幸せのかけ声。
そこにはきっと、幸福色の飲み物がある。


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