【甘い香りに…】 文/ほしのさくら

 
気がつくと、甘い香りが部屋に漂っている。
彼がベイリーズミルクを作っているようだ。

彼とは長い付き合いだが、どこから仕入れてくるのだろう、彼はいつも面白い香りを事も無げに見つけてくる。昔から鼻が利くわたしは、彼の香り好きには閉口させられたものだった。最近じゃあ、わたし好みの香りを熟知している彼。彼の選ぶ香りに、関心させられることが多い。っていうか、そういう香りを持ち帰る時は、何かある。

ベイリーズはアイルランドのお酒。アイリッシュウイスキーにクリーム、スプリッツ、チョコレート、コーヒー、バニラなどを加えた甘いクリームリキュールだ。

私はこのベイリーズのような甘い香りにめっぽう弱い。今回は何なの?と、白い目を彼に向けながら、ベイリーズミルクを飲む。そのうちほろ酔いも手伝って「ま、いいか」的な気持になってくるから、ベイリーズの甘い香りは不思議 なものだ。
「で、何?」と、わたし。
「アイルランドでギネスを呑みたい」と、彼。

それが言いたいがためだけに、アイルランドのベイリーズを買ってきた彼に、「あほかっ」言い放ちながら、笑ってしまった。

「どこでもギネスは呑めるじゃないの…」と、言いかけて彼の方を振り返ると、すでに旅行パンフレットを手にしている彼…。
「こういうこともありかな」と、もう一杯ベイリーズミルクのおかわりをねだるわたし。今年の夏には、アイルランドへ本場のギネスとベイリーズを飲みに行く2人。甘い香りにほだされたと思えばそれも好し。


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