【水の風土】 文/廿 里美


あまり語られないことだが、
ひとが日本酒、特に地酒を手にして最初に鑑賞するのは、酒の味でも香りでもない。
名前だ。
地酒の名は、地名や山河名から付けられていることが多いものだ。

資源のない国と学校では教わった。
けれど、清冽な水を、これほど豊かに産する国は世界にも少ない。
水が米を育てる。
収穫された米がもう一度水と出会い、酒になる。
真冬の蔵で杜氏たちはそれを助ける。
地酒の名前は、酒を生み、はぐくむ風土への賛歌としてつけられる。

酒たちは蔵から旅立つが、決して故郷を忘れない。
あの水から生まれたことをいつも覚えている。


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