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【想い出酒】 文/ゆっち
「別れちゃって、食欲がないんだ。
一緒に飲んでくれない?」
大学の同じサークルの、男友だちから電話がかかってきた。
いつも一緒のメンバーで集まっては飲んでいたのだが、
最後まで飲み続けているのは、酒豪の彼とわたし。
2人きりで飲みにいくのは初めてだった。
居酒屋のカウンターに座り、ちびりちびりやりながら
たわいもない話を繰り返す。
彼女のことは何も言わない。わたしも何も聞かない。
だいぶ酔いが回ったころ、彼がぽつりと言った。
「好きだったんだ。初めて自分で行動を起こしたんだ。
でも、相手が無理をしてる感じがしたんだよな……。
だから俺、別れようって言ったんだ。」
「よし、今夜はいっぱい飲もう!」と言って、酒を注いだ。
何時間も飲み続けて、ろれつが回らないほどべろべろになっても、
彼は彼女のことを決して責めなかった。愚痴も言わなかった。
そして「今日は付き合ってくれてありがとうね!」
と言って帰っていった。
正直驚いた。今日はとことん、愚痴を聞いてあげよう! という
気持ちでいたからだ。
そして、わたしはこっそり彼のことを見直していた。
すごく男気のある人だと。
あれから何年も経ち、いろいろあって、
今、彼はわたしの目の前でうまそうに酒を飲んでいる。
これからもずっと、その笑顔でうまい酒を飲んでいってね。
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